生命のバトン
ふと道に迷った時さだまさしさんの生命のバトンというトークを聞いています。
肉体がなくなることだけが死ではない。自分がつくりだしたものを誰かが受け取ってくれているのなら自分は死なない。
そういう自分になれているのかなとこのトークを聞くたびに考えてしまいます。
トークの一部分を書き起こしてみました。よかったら見てください。 さださんの音声を聞くのがおすすめです。感情がこもっているので心に響きます。 さださんのトークは素晴らしいものがたくさんつまっています。興味が出た方は是非聞いてみてください。
天然色の化石、それから防人の詩とお届けをしました。 防人の詩、まあ、27,8の若造が生老病死を歌うっていうんで気味悪がられましたけどね。
(中略)
生老病死ったってね、そんな難しいことを歌いたかったんじゃありません。 元歌は万葉集の中にあります。
鯨魚取り(いさなとり) 海や死にする 山や死にする
死ぬれこそ 海は潮干て 山は枯れすれ
第16巻のまあ正確な番号は覚えてませんが、3千6百いくつです。そのへんの歌にあります。詠み人知らず、
鯨魚取り 海や死にする 山や死にする
死ぬれこそ 海は潮干て 山は枯れすれ
鯨魚取り(いさなとり) というのは鯨取り(くじらとり) 、漁師のことですね、海の枕詞。 漁師たちよ、と呼びかけます。海は死ぬんだろうか、山なんか死んでしまうんだろうか。 問答歌の形式になっています。それに応えて曰く。 死ぬよ、だから海は潮が引いていくじゃないか、山は枯れていくじゃないか。
こんなすごいうたが1200年以上も前に、どこの誰かもわからない人がこんな歌を残している。すごいなと思います。
確かに海は潮が引いていくから死ぬっと言ってもいいけれど、これは永遠の死ではない。やがて満ちてくる。山も枯れて行くけれども翌春になったら必ず緑に満ちる。
去年の葉っぱとは全く違う個体だけれども、これは生命が甦ったんと考えていいんだと思えば、僕の命は僕の人生で終わりです。だけど僕がもしも自分なりの小さなささやかなバトンを自分で、こう、作り上げる事ができて、先輩からもらったものを全部この中に織り込んで、僕の次の誰かに渡す事ができたら、僕が死んでもバトンは残っていく。僕はバトンが残っている限り、死なない。生きるってことはそういうことなんだよ、とこの歌が教えてくれるような気がするのね。
引用:トーク7 生命のバトン【さだまさしデビュー35周年記念コンサートFESTIVAL HALL 200】
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